昔、男が居た。彼はエロ小説やエロ文を垂れ流すエロ作家というもの悲しい職業につい ていたのだが、あるとき思うことあって伊勢に出かけた。彼が伊勢に出かけたのは、決して そこにある現代の女護ケ島と呼ばれるある島全体が風俗街となってるあの島に渡って痴 態の限りを尽くすためではない。また国際秘宝館に出かけて馬の交尾ショーやくじらのちん ぽを見るためでもない。彼の目的は単なる仕事の息抜きと、新たな小説のネタを仕入れる ことだった。

　鳥羽の水族館で海女のショーを見たり、志摩観光ホテルであわびのステーキを食べた り、パルケエスパーニャで絶叫マシンで気を失いかけたり、戦国時代村で町娘の扮装をし たコンパニオンの乳を揉んだりしながら、男はネタを探し回った。しかし、思いつかない。

　彼はふとしたきまぐれから、高級ホテルに投宿するのをやめて、伊勢神宮の近くにあるペ ンション、「斎ぐう」に泊まることにした。タクシーでその前を通過したときになんとなくビビビ と感じるものがあったからである。

　ペンション「斎ぐう」のオーナーは、男の顔を見てすぐに自分が若い頃からズリネタとして 幾度となくお世話になってるあの偉大なるエロ小説の帝王であると気づいた。それで自分 の娘にこのように言い聞かせた。

　「父さんはあの人に若い頃ずいぶんと世話になったんだ、きちっとおもてなししてあげなさ い。くれぐれも粗相のないように。」

　親の言いつけであったから、ペンションの娘は部屋までマッサージに行ってあげたり、お 風呂で背中を流して上げたりとたいそう手厚くもてなした。このようにして心を込めてもてな したので、男はいつもの好き心が鎌首をもたげてきたのである。

　「この娘とＨできるだろうか？」

　二日目の夜、男は「今夜どうしても逢いたい」と伝えた。娘もまた「いやよ」とはっきり意志 表示してるわけでもない。けれどもさすがにひとつ屋根の下には娘の父親もいるのでうか つなことはできない。しかし、それほど大きなペンションでもなかったので、親が寝静まった のを確かめてから、娘は大胆にも男の部屋に忍んできたのである。しかし、その時間には すでに男はいつもの習慣で晩酌をしていい気持ちで眠りについてしまっていたのである。グ ーグーいびきをたてて全く気持ちよさそうに爆睡していたのであった。

　眠っている男を起こすのは悪いと思ったのか、娘はしばらく枕元に座ってその寝顔をずっ と眺めていた。眺めてるうちにどうしようもなく愛しく思えて、娘は突然ふとんの中に潜り込 んで、男の股間のものを口に含んだ。もちろん就寝中のことであるので、それは力無く棒コ ンニャクのようにふにゃふにゃしていたが、娘がていねいに舌先で刺激を与えながら包む 込むように口中で愛撫を与えると次第に硬度を増し、今マクドナルドで売られているフラン クバーガー程度にぷっくりとしてきた。勢いづいた娘はさらに強力な舌技を亀頭部に浴び せ、同時にアナルに指を入れて前立腺を刺激し、また竿だけではなくて玉袋にも愛撫を加 えた。あまりの気持ちよさに男は目をさますことなく、夢精に近い状態でそのままイッてしま った。ふつうならそこで目を覚ますところだが、あまりにも強い快感はそのまま男を気絶さ せてしまった。

　竿から垂れる残滓をすっかり舐め取った娘は、愛おしそうに男の寝顔のほっぺにKISSす ると、そのまま夜が明ける前に部屋を出てしまった。

　翌朝、男はいつもの朝立ちが起きないので不審に思って自分のペニスを点検してみた。 すると、何者かに激しく扱かれたような痕跡と、かすかな栗の花の残臭があった。もしや自 分には夢遊病の気があって、寝ている間にフラフラと女の部屋に押し入ってＨをしてきてし まったのだろうか？　あるいはこの部屋にあの娘がやってきて、就寝中に男を犯して去って いったのだろうか？　

　男はフェラで昇天しかけた夢をたまたま見ていたことを思い出した。女の顔は髪に隠れて 見えなかった。

　もしかして昨夜娘が部屋に来てくれたのではないだろうかと思った男は、箸袋に歌を書い て、朝食の時にいつものように給仕をしてくれた娘に渡した。それはこういう歌であった。

　きみのフェラわれやイキけん思ほえず夢かうつつか寝てかさめてか

（君やこし我やゆきけむ　おもほえず　夢かうつつか寝てか覚めてか）

　（昨夜のフェラチオでわたしはイッたのでしょうか？　はっきり思い出せません。また夢の 逢瀬だったのでしょうか？　それとも現実のことだったのでしょうか？　寝ている間のことで しょうか？　目覚めている間のことでしょうか？）

　

　娘はその場で激しく嗚咽してそれからこのように返した。

　舐めまくる心のやみにまどひにき夢うつつとは今宵さだめよ　

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　（かきくらす心の闇にまどひにき　夢うつつと は　こよひさだめよ）

　（あなたの愛しいチンポを舐めまくったのかどうか、心が暗くなっていたのではっきりとは 思い出せません。あれが夢だったのかそれとも現実だったのかは、今宵もう一度逢って、 今度は私の中にあなたのその自慢のモノで一発決めてください。）

　　

　そう詠んで恥ずかしそうに部屋を出ていった。男は一日中気分も上の空で、早く夜になっ てくれ夜になってくれとばかり念じていたが、せめて今夜人々を寝静まらせてから、思う存 分バッコンバッコンやりまくろうと思って待っていたところ、なんと大作家が我が町に来てる ということで教育委員会のお偉方や村会議員や校長先生や消防署長やストリップ劇場の 踊り子たちなどが大挙してそのペンションにやってきて、どんちゃん騒ぎを明け方まで繰り 広げるということになってしまった。

　翌朝、飲み過ぎでひどい頭痛に苦しみ悶えていた男は、その日がなんと娘の「結婚式」の 日であったことを知ったのである。もうあの気持ちいいフェラをしてもらうこともできないの だ。もちろんＨどころではない。男は血の涙を流したがもうどうにもならない。結婚式の支度 で忙しそうにしてる娘を両親の目の前でいきなり背後から犯すわけにもいかない。

　男があきらめて出立しようとして、宿代を精算しようとして出したクレジットカードの伝票 に、娘は歌を書いて差し出した。

　立ち人のさわれど濡れぬマンコあれば　　　　　（かちひとの渡れど濡れぬえにしあ れば）

　（勃起してる男性が触れてもなかなか濡れないほどの幸薄い私のマンコでありましたの で）

　と書いてあって、下の句はなかった。男はあわてて名前をサインしたその下に

　股覆うさ　かの　せいきは越えなむ　　　　　　　　（また逢坂の関は越えなむ）

　（だったらぼくの手がきみの股を覆うさ。このぼくの性器が、障害を越えてきみのアソコに 入って欲しいんだよ。）

　と詠んで、そのまま近鉄特急で旅立っていった。

　この昇天フェラの秘技を持つ、ペンション「斎ぐう」の娘がいったい誰と結婚したのか、そ の幸せ者の男はいったい誰であったのか。それは定かではない。

　ＥＮＤ

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